くらしのたね

冬の大根

 10月、どうしてこんなに暑い日が続くの! ちょいとぷんぷんしていたら、突然「木枯らし一号」が吹いて極端に寒くなり、ものすごいスピードで晩秋に突入した感じ。もう何日か秋晴れの爽やかな日が続いて欲しかったけれど、そんなの人間の勝手な願望か。 これから一気に寒くなるのかな? せめてあと2、3日、爽やかな秋晴れの日が欲しい。

 だけど嬉しいこともある。 それは色とりどりの大根やカブが出回ること。今日明日中には巨大な姿の三浦大根も登場するはず。ああ、とても楽しみ。大根類の素晴らしい味わいを知ることができたのは三浦半島のおかげ。

 下の写真の上にあるのが「あやめ雪かぶ」下にあるのが「レディーサラダ」。 「あやめ雪かぶ」は、首の部分が薄紫で下に行くに従い真っ白。きれいでしょ。粋な芸者さんみたいじゃありませんか? ぬか漬けにすると、きめ細かな肌がツルンツルンでとっても美味しい。サラダにしてももちろん美味しい。

 そしてレディーサラダは又の名をレディー大根という。 こちらはサラダに最適。大根おろしにするとピンクの大根おろしになってとてもきれい。


レディーサラダ

 冬に出回る根菜類を薄くスライスしてサラダに加え、パルミジャーノ=レッジャーノとレモン汁と塩とオリーブオイルで作ったドレッシングを絡めて食べると、たまらなく美味しい。 サラダが美味しい冬がくる! と喜んでいる。


冬の根菜サラダ



 さてさてこちらは今年のニューフェース野菜。いつも行く直販所でマダムが、今年はこんなのもありますよ、と見せてくれた「日野菜」という名の野菜。 「ヒノナ?ヒノナ?あのヒノナ?」日野菜と聞いて50年近い昔、友人と二人で1週間を過ごした奈良旅行を思い出した。 あの時、ヒノナという名前の漬物が美味しくて、毎食夢中になっ て食べた、あれだ。感動の再会である。

 「ちゃんと育ったものは1本足なんだけど、これ暴れん坊将軍で二股三股なの。規格外だか らタダでいいわ」とマダムが言い、もらってきてぬか漬けにした。塩味と苦味が入り交じった独特の辛さが美味しい。奈良で食べたのもこんな味だった。 日野菜もいよいよ関東に上陸か。 嬉しいね。
(調べたら日野菜の原産地は奈良ではなく、滋賀県蒲生郡日野町だそう。)


ヒノナ




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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)