くらしのたね

「発見! 初喰い! うまい!」プンタレッレ


こぐれひでこ|プンタレッレ


 この野菜に出会ったのは1997年3月21日、イタリア・ローマのフィオーリ広場でのこと。そんな昔のこと、本当に覚えているの?と私の記憶力を怪しむ方もおられるでしょうが、この日付だけは完璧です。なぜなら1997年の日記に「フィオーリ広場でプンタレッレという野菜を発見! 初喰い! うまい!」という文字が踊っていて、その日にちが1997.03.21。野菜の名はプンタレッレpuntarelle(以後、愛を込めてプンタちゃんと記す)。市場で表記された文字をすぐさまその場でメモした。発見したその日からのローマ滞在中、レストランでこの文字を探し出し、必ず食べた。何回食べても飽きなかった。

こぐれひでこ|プンタレッレ





 みず菜のように見えるこの野菜。食べる部分は葉っぱじゃなく、その内側に潜む、アスパラガスに似た形態の茎部分(上の写真:オレンジ色の丸印)。ひと株に数個のプンタちゃんがついている。プンタちゃんの中は空洞。縦に細長く裂いて水に1時間さらすと、まっすぐだったプンタちゃんはくるりと丸くなる。ニンニクとオリーブオイルとアンチョビでソースを作り、水切りしたプンタちゃんにからめれば、さっぱり、シャキシャキ、ちょっぴりほろ苦のおいしいローマ郷土食の出来上がり。ローマで食べたプンタちゃんの100%がニンニク&オリーブオイル&アンチョビの味付けだった。

 プンタちゃんはローマ特産の冬野菜(11月~3月中旬)。17年前にはイタリア国内でも知られていなかった(ローマ以外で)というこの野菜、今、日本ではスーパー(高級な、としておいた方がいいかも)で見かけることがある。もちろんイタリア料理店ではたびたび提供されているので、見かけたらぜひお試しあれ!時間が経つと水が出てべちゃべちゃになっちゃうから、ソースにからめたらすぐに食べてね。プンタからのお願いです。


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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)