くらしのたね

空

 くらしのたねの連載、vol.01は「雲」でした。
あれから5年が過ぎましたが、私は今でも空が好き。 そして雲が好き。 海辺の町に居を移してから、以前に増して広い空を見る機会に恵まれて、「空はいいなあ、雲はいいなあ、綺麗だなあ」としみじみ思っています。 一点の曇りもない青空も、そりゃまあ素敵なのですが、私はやっぱり表情のある空の方が好き。 大きな白い雲がぽっかり。 小さな雲がいくつもぽっかりぽっかり。 白だけじゃなくてグレーだったりピンクだったりオレンジ色だったり紫色だったり。


雲|こぐれひでこ


 でも、優しい空だけじゃなくて、荒々しいドラマチックな雲も魅力的です。
お昼を過ぎたばかりなのに、夜のように辺りが暗くなり、空を見ると分厚い雨雲が横たわっています。 帯のような雲の下に小さく見えるのは大島。 雨はもうじきこっちにやってくるのでしょうか。 何か不穏なことが起きそうだと、ちょっとドキドキ。 泰西名画のような感動的な情景です。


雲|こぐれひでこ


 太陽が沈んだ直後の空。 オレンジ色に染まる空を真っ黒な雲が襲っているみたいです。 これがもし、映画の1シーンだったら、この黒い雲の下でどんな物語が繰り広げられるのだろう……なんてことを考える。それもまた楽しい。


雲|こぐれひでこ


 美しい色に空が燃えたあとは、夜のしじまが忍び寄り、お月様が私たちを見まもり始めます。 やがて星がきらめく夜が訪れます。 


雲|こぐれひでこ



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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)