くらしのたね

おいしい清貧:SYOKU-YABO農園


 久しぶりに青空が広がった朝。幸せな気分になり、三浦半島の山中にあるという「自給自足レストラン」へ出かけることにした。
 国道から林道を車で数分進むと視界が開け、小さな山に囲まれた畑が現れた。 気持ちがいい! SYOKU-YABOという自給自足レストランである。おだやかで上質な空気が流れていた。なんだろう、この心地よさは。

SYOKU-YABO風景

 畑の先にいくつかのテーブルが見えてくる。おっ、野外ステージもあるぞ!いい季節にはLIVEも行われるのだろう。真ん中に厨房の屋台があり、
 (1)干し大根と豚肉の魚醤かてめし(フダン草の梅酢漬けのせ)
 (2)ニンジン葉のかてめ し(昆布、じゃこ、ニンジンの佃煮のせ)
 (3)アラメの醤油かてめし(ホキとターサイの南部玉味噌和えのせ)
の他に本日のランチ=鶏出汁の大根めし(塩魚汁風味)の4種類から選択。みそ汁の出汁はアジの煮干しと鰹節と日高昆布。味噌は全国各地のもの数十種類から選ぶことができる。野菜はすべてSYOKU-YABOの畑で採れたもの。かてめしとは混ぜごはんのこと。粗食……そんな文字が頭に浮かんだお膳だったのだが、食べ進むうちに喜びがむくむくと生まれてきた。おいしいのである。体の中にたまっていたイケナイものを洗い流してくれそうな清らかな味わいだ。

SYOKU-YABO室内

 戸外ではなくビニールハウス内で食べたのだが、ここがまたすごい!オルガンや蓄音機、石油ストーブなど、ずいぶん昔にお馴染みだったものが、この場所ではまだ健在!ハウス内にもステージあり。開拓者の生活……ふとそんな言葉が頭に浮かんだ。

 
SYOKU-YABO食事

SYOKU-YABO
www.syoku-yabo.com
野暮長&トータルプロデューサー/眞中やす氏からいただいた名刺には
「不揃いな形だって、虫に食われた野菜だって、主役になるべき! 消費者の意識を変えれば世界が変わる!」 と書いてあった。まったく同感!
 飽食にまみれた我が生活をしみじみ振り返ってしまったのである。
 


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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)