くらしのたね

端境期で光る日本カボチャの姿

 週イチで訪れるJAの直売所。 ついこの間まで陳列棚からこぼれ落ちそうに緑の野菜が並べられていたのに、「涼しくなってホッとしましたねえ」などという挨拶を近所の人と交わすようになった頃から陳列棚が少しずつ寂しくなっていき、今では空っぽの棚もあちこちに目立つ。 壁に貼られた紙には「端境期なので品物が少なくなっています。譲り合ってお買い求めください」とのお願いも。


 「端境期(はざかいき)」とは農産物や商品の新旧交替期で品薄になる季節。 地方によってその時期は変わると思うが、私の住む三浦半島では今が端境期。 端境期の大地は緑の大地から黒い大地に姿を変えた。 でも、黒い畑のその先に初々しい緑が見える。 発芽した三浦大根の緑だろうか。 いいでしょ、この風景。 私はこの辺りを、勝手ながら「三浦のトスカーナ」と名付けている。


端境期の畑|こぐれひでこ


 トスカーナの丘陵を走り抜け、JAとは別の、個人経営の野菜直売所に到着。 ここで出会った魅力的な野菜。 それは、まるで陶器と見紛うようなカボチャだった。 添えられたメモによると白菊座という日本カボチャ。 色合い、質感、形態。 素晴らしいオブジェである。 「なんでも鑑定団」のあの方は「いい仕事してますねえ」と感心してくれるだろうか。


白菊座  日本カボチャ | こぐれひでこ


 小さめのものを一つ購入。 リビングの一角に飾ることにした。 自然の創造力は本当にすごい! 2ヶ月ほど楽しませていただくことにしよう。 


本カボチャ|こぐれひでこ



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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)