くらしのたね

バターナッツカボチャ

 夏の終わり。直販所の野菜売り場の風景が寂しくなる。スイカやキュウリやトマトなど、色とりどりの野菜たちで埋め尽くされていた直売所の陳列台には空き地のような空間が目立つ。秋野菜が出そろうまでの、ちょっと寂しい直売所の風景。


バターナッツカボチャ

 寂しいな、つまんないな、と思っていたら、混雑気味の陳列台を発見。そこには、粘度細工で作ったオブジェなんじゃないかと思われる、ベージュ色の作物が林立していた。ひょうきんで可愛い形に惹かれ、凝視していると、事前にその存在をチェックしていた夫が、「バターナッツカボチャだって。ナッツみたいな味がするの?」と私に訊ねた。私だってバターナッツカボチャに会うのは初めて。味など知るはずもない。陳列台に「ポタージュにするとおいしい」というメモが貼ってあったので、作ってみることにした。


バターナッツカボチャ


バターナッツカボチャスープ


 帰宅してネット検索してみると、バターナッツは南アメリカ大陸原産。アメリカでポピュラーなカボチャだという。「なんといってもポタージュがおいしい」という記述が多いので、ポタージュを作った。 真ん中から切ってみるとこんな感じ。果肉は軟らかくすぱっと簡単に切れる。切断面のヴィジュアルも意外な形。私好みである。タマネギをバターでいため、カボチャを一緒に煮込み、ミキサーにかける。


バターナッツカボチャポタージュ


 塩、コショウで味付け。生クリームを混ぜ合わせたら完成。食べてみたら本当に、バターとナッツの味がした。アラマ、こりゃおいしいわ。一般のカボチャと同じように6ヶ月以上も保存できるそうなので、2、3個買っておこうかな、と思っている。




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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)