くらしのたね

苦手なヘビ…を買う

 週に一度、買い出しにいく野菜の直販所には、いつも新しい発見がある。今回発見したのは……ヘビウリ。

 私は蛇が大嫌い。テレビに登場しそうな気配を感じるとチャンネルを変えるし、印刷物に蛇らしき姿を確認すると、その印刷物を放り出す。he:bi。音を聞いただけでもイヤ?な気分になるというのに、そんな名前の野菜を買ってしまった。何本も並んだヘビウリのうちから選んだのは、もっとも蛇に似ていないウリ。ヘビウリは一般のウリと同じようにツルにぶら下がって成長するそうで、その姿は本当に蛇に似ているそうだ。店の人の説明を聴きながら、蛇の姿を想像してしまい、ゾゾゾ?、ゾゾゾ?と鳥肌が立った。ああ、いまこうやって文章にしていても、蛇と変換されるたびにいやな気分になる。

 それなのになぜ、そんなに苦手なヘビウリを買ってしまったのか。それは「皮をむくときれいなエメラルド色の身が現れて、それはきれいなの」という店の人の話を聞いて、好奇心が押さえ切れなくなったからだ。
 ヘビウリ群の中で、中肉中背、まっすぐのものを選んだ(もっと蛇に似ているのもあったが、どうしても手にとることができなかった)。測ってみると長さは約80㎝。細身である。


へびうり長さ


 ピーラーで皮をむくとご覧のような美しい緑色が現れた。縦に切ってワタと種を取り出すと、肉厚のパプリカと同じくらいの厚さの身が残る。


へびうり生


 これを斜め切りして油でジャジャッとすばやく炒め、ちょっと強めに塩味をつける。食感がグギグギとショリショリの中間で、面白い。そしておいしい。そしてなんといってもきれい!


へびうり炒め


 アジアの夏野菜だそうなので、日本に出回るのはそろそろオシマイか。いやはや、世界中には不思議な形のおいしい野菜があるものである。



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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)