くらしのたね

セイロの底力に惚れ惚れ

 昔、電子レンジがなかった時代、冷やご飯を温めたり、サツマイモをふかしたり、茶碗蒸しを作ったりするための蒸し器がどこの家にもあった。 チン! と出来上がりの合図を知らせるだけの道具とは違い、「シュワシュワ」と湯気が立ち上る光景は、ほのぼのとしていて温かく、蒸しあがりが待ち遠しかった。

 我が家にはいくつかの蒸し器があるが、イチバンのお気に入りは竹製のセイロ。 中華料理店の肉饅頭やシュウマイでおなじみのセイロである。

セイロ|こぐれひでこ

 先日、夕餉の支度を始めて間もなく、電気が消えた。 隣家の電気も消えている。 停電だ。 冷蔵庫から取り出した筍ご飯はカチカチでパラパラ。 温め直さなくては食べられたものではない。 困った。 とそこで思いついたのがセイロの存在。 クッキングシートにご飯を載せてセイロで蒸したら、炊きたての美味しさが蘇った。 しかも、ご覧くださいこの姿。 料理は 見た目も大事です。


セイロで蒸した筍ご飯 |こぐれひでこ

 筍ご飯温め直しの成功に調子付いたワタクシ。 翌日、サイドディッシュの野菜(新じゃがとレンコンの輪切り)をセイロで蒸してみたら、食感はふっくらとしてしっとり、味も香りもしっかり残っていて、とても美味しい。 竹製セイロの調理面での活躍はもちろんのこと、見た目の良さにも惚れ直したのである。


蒸し野菜|こぐれひでこ

 

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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)