くらしのたね

還暦祝いのスイカケーキ

 友人が今月60歳の誕生日を迎える。 60歳といえば還暦。 ああ、あの人も還暦になるのかぁ。 還暦のお祝いを我が家で催すことにし、共通の友人Tと料理は何を作ろうかなどと話し合っていたら、とんでもないことに気がついた。

 還暦を迎えるその友人は1年前からグルテンフリーの食事を続けている。 グルテンとは小麦、大麦、ライ麦などの穀物と表皮の間にある胚芽と胚乳の部分から生成されるタンパク質の一種(生麩や焼き麩などの主原料でもある)。 1年間、彼女はパンもてんぷらもうどんもパスタも……、ともかく小麦粉を使った食物を口にせず暮らしていて、すこぶる調子がイイらしい。

 というわけで、還暦祝いの席に必要不可欠とも思われるバースデーケーキ、それを用意するのは問題なんじゃないか、と考えたのである。 グルテンフリーが盛んになった近頃では米粉を使ったケーキなどもあると聞くが、そのようなパティスリーがどこにあるのか、門外漢の我々にはわからない。 困った。

 Tと二人、黙り込んだ。 しばし後、Tが目を輝かせてこう言った。 「果物をアイスクリームみたいに小さな球体にくりぬいてロウソクを立てたらどう?」と。
あ、それイイ、それ素晴らしい案、それカワイイ。即座に決定。

 早速「フルーツくり抜き器」でネット検索してみると、ありました、ありました。 フルーツデコレーターとかフルーツボーラーとか、ちょっと洋風名称の簡単な作りの器具です。

 還暦の色は赤、赤い果実の代表はスイカ。 スイカを買ってきてクルリクルリと小さな丸をくり抜きスイカの器に戻してみると、あらかわいい! ロウソク代わりのフードピックを6本立てて、60歳のお祝いケーキにすることに。

 ちなみに私は10年前、男友達からカシミヤ製の赤い毛糸のパンツをもらいました(この連載vol.5を参照)。あれから10年。時の流れはホントに早い!


還暦祝いのスイカケーキ

還暦祝いのスイカケーキ


 



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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)