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くらしのたね

過酷な夏、唯一の喜び:洗濯


 梅雨が始まったのも突然だったけれど、梅雨が開けたのも突然だった。あれ、あれれっ、というまに猛暑日が襲ってきて、体も心もあたふたしている。どうしてこんなに疲れるのか、どうしてこんなに活気が出ないのか、ついつい自分に不信感を抱いてしまうけれど、それもこれも、突然の暑さのせい。いや、暑さというよりも熱さと表現したいほどの過酷な夏の到来だ。

 近年「熱い」ことで有名になった埼玉県熊谷市は私の生まれ故郷。「熱いぞ、熊谷!」というキャッチフレーズで名を馳せているが、近頃は群馬県館林市や山梨県甲州市、岐阜県但馬市などに負ける日も多く、首位の栄光も曇りがちだ。熊谷市民の中にはがっかりしている人もいるらしい。たしかにね、以前は知名度の低い場所だったのに、最近は熊谷出身だと名乗ると、「ああ、あの熱いところね」という言葉が必ず返されるほど有名な町になった。しかし、これは、誇っていいものなのかどうか……。


洗濯 | くらしのたね





 猛暑の夏がやってきて唯一嬉しいのは「洗濯」。カ~ンと照りつける太陽は短時間で洗濯物をカリカリに乾かしてくれる。そう、嬉しいのはこれだけですね。物干しに洗濯物を運ぶとき、あなたはどうしていますか? 私はね、ビニールで編んだこんなバスケットに洗ったものを入れて、物干しのところまで運びます。それでもって、物干しに干すわけです。この時だけは猛暑も何のその。幸せ感が生まれます。バスケットの先に見えるのが我が家の物干し。使わない時は真ん中からパタンと閉じられて平らになります。急に雨が降ってきた時は、洗濯物をかけたままパタンと閉じて室内へ移動することも簡単。

 さっき洗濯物を干したとき、「うむ、やっぱりこれはなかなかの優れものだぞ」と思ったのです。できればもうちょっと頑丈に作られたものが欲しい。うちの物干し、歪んでしまっているのです。でももう売られていないんです。便利さとデザイン性をかね揃えたこんな物干し、もっと作って欲しいなあ。マンション住まいの方には特に有効利用してもらえると思うんだけど。




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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)