くらしのたね

網焼きプレートで思う:デザインの重要性


 あれは5、6年前のことだっただろうか。
 友人宅で京都から取り寄せたフグ料理をごちそうになった夜のことだ。お皿の柄が透けて見えるほど薄造りされたてっさを、おいしいおいしいといいながら食べ終わり、ふぐちり鍋の準備が整ったとき、一人の女子がこう言った、ねえ、フグを焼いて食べようよ、と。

 一同が賛成し、登場したのがカセットガスコンロにのせる網焼きプレート。スモーキーなブルー。色がシャレている。中央には放射状に熱が伝わるようなカバーがあり、周囲には水皿。

 デザインもいい。気に入った。焼きながら食べたフグの味は格別で、この網焼きプレートが欲しくなった。

 翌日、ネットで注文。2日後には手元に届いたのだが……我が家でフグを食べるチャンスには恵まれぬまま、網焼きプレートは放置されていた。

 
カセットガスコンロにのせる網焼きプレート

 ところが先日、10センチはあろうかという貝(大アサリ)を食卓で焼いてみようということになり、網焼きプレートが初登場。ジュブジュブという音を発しながら、貝が口を開いていく。日本酒と醤油をちょちょっと注ぎ、香りを楽しむ。おしまいには「うまい!」と言う叫びとともにおなかの中に消えていく。
 
 焼きながら食べる。焼き肉ではおなじみの食べ方だが、こりゃ楽しいものだ。
 
 我が家では焼き肉を自宅でする習慣はないのだが、先日肉を焼いてみた。そのとき、白菜で巻いたらおいしいんじゃないのか、と思いついて、白菜も焼いてみたのである。そしたらアナタ! おいしいの! 肉もおいしかったけど、焼き白菜はそれよりもっとおいしい。味付けはオリーブオイルと塩とパルミジャーノ、あるいは生姜入りの大根おろし醤油。

大アサリお肉と白菜

 使い勝手も大事だけれど、デザインね。私はデザインも大事だと思うの。だってさあ、食卓に変なデザインのものが場所をとっていたら、おいしさも半減すると思いませんか? これくらい素敵なデザインの調理器具が増えたらねえ……近頃たびたび、そう思いながらこの網焼きプレートを見つめています。

 「イワタニ 網焼きプレート CB-P-AM2」それほど値の張るものではない。




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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)