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失敗からスタートした我が家の養蜂 | こぐれひでこ くらしのたね

 五月の始め、友人から「ミツバチの巣箱を設置する場所を探している知り合いがいるんだけど、おたくの庭にどう?」という問い合わせがあった。蜂の巣があるということはミツバチがぶんぶん飛んでいる庭になるのか? 嫌だな。 私はそう考えて尻込みをした。しかし夫は乗り気。アレヨアレヨという間に、庭の一角にこんな巣箱が設置され、日本ミツバチが飛び回る庭になった。

 「最初からこんなにたくさんのミツバチが集まってくるというのは、ハチミツ採集、期待できますねえ」巣箱の持ち主(我が家は管理人?)は嬉しそう。夫も時々巣箱を覗き込んで、結構いっぱいミツバチがいるよ、と満足そう。

ミツバチの箱|こぐれひでこ くらしのたね


 巣箱の設置から一ヶ月後、夫が2週間の海外ロケに出かけた。その間、私は巣箱のことなど知らんふり。帰国して庭のチェックに出かけた夫が「ミツバチが消えちゃった」としょんぼり。ナメクジあるいはスズメバチにやられたか、それとも女王蜂が老齢すぎたせい?(養蜂初心者である夫の推察だけど) 「ちゃんとハニカムができて、幼虫が入っていたのに」とため息をつく夫。その手には美しい形状の蜂の巣があった。


ハニカム|こぐれひでこ くらしのたね



 そのハニカム、どうするの? と尋ねると、加熱して蜜蝋を採取するのだという。その蜜蝋を誰もいなくなった巣箱に塗って、もう一度女王蜂を中心としたミツバチの集団を呼び寄せるのだという。今月古希を迎える夫の表情は輝いているように思えたのである。男にとって養蜂とは、とんでもなく夢のある作業であるらしい。


蜜蝋|こぐれひでこ くらしのたね


今年旬のハチミツを売っています!


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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)