くらしのたね

ふきのとうの花は室内でも素敵


 今年の冬は寒いね、と何回言っただろう。大雪の被害を報じるニュースに目を奪われたことも何回もあった。こりゃ春の訪れは遅いだろう、と覚悟をしていたらアナタ、突然汗ばむような日がやってきて、あらまあ春が来ちゃったの? と驚いたら、その翌日はまた寒い日が訪れ、はたまた春イチバンとは言いがたいほどの強風も吹き、砂埃で風景はかすみ……今年の春への移行は、なんとも激しいものだった。自然に翻弄される日々は身も心も不安定になる。だからついこの間まで、今年は春なんて来ないのかも、なんて、ペシミスティックな気分でいたら、コブシの蕾が膨らみ始めたのをきっかけに花盛りの季節がやってきて、我が家の雪柳もこんな風に咲き誇っている。春はいい。気持ちがいい。


ユキヤナギ

 2ヶ月ほど前には水仙が誇らしそうに咲いていた雪柳の下に、今は蕗が勢力を増している。水仙が全盛の頃、頭を出したふきのとうは天ぷらで味わったのだが、今ではぐんぐん成長していて食材としては使えそうにない。蕗料理は葉柄が太くなるまでお預けだ、と思っていたとき、ふきのとうの花が可憐でかわいいことを発見! どうして今まで思わなかったのか不思議だ。摘んできてブーケのように花瓶に飾ったらNICE! 野の花は無垢な様子がいい。


ふきの花

 《やはり野におけレンゲソウ》という言葉がある。
それはそうだと基本的に私も思うのだが、無垢な野の花を室内に飾って満悦しているって……ふきのとうの花にとっては迷惑なこと?


こぐれひでこ「くらしのたね」バックナンバー

やさしい手作りのある暮らし てころはこちら

プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)