くらしのたね

久々に爽快だった馬毛ブラシの買い物


 半年あまり前、VOL.44で馬毛ブラシの素晴らしさについて書いたのだが、そのボディブラシの毛が抜け始めた。これでは素晴らしいとは言えない。しかし10年近く使用しているのだから、劣化するのも当然か。

 爽やかな秋晴れの日、浅草の雷門にあるブラシ店に出かけた。これまで数本、同じ馬毛ボディブラシを買っているのだが、その店に出かけるのは初めて。デパートで催されていた「江戸工芸品フェア」で入手して以降、電話注文していたので、店を訪れたことはなかったのだ(ネット販売をしていない)。

 ボディブラシ、ヘアブラシ、卓上ほうき、瓶用あるいは茶渋取り用ブラシ、漆塗り用の刷毛、化粧用の刷毛など、店内には様々なブラシが平らに陳列されている。「これは何のための刷毛ですか?」店の人に質問を連発する。シンプルで粋なデザインのブラシや刷毛に私は興奮していたのであった。

 手植えの馬毛ブラシは安くはない。しかし長い間、心地よく使えるとなればそう高いものではない。それだけ買ったらOK、そう思って出かけたのに、イノシシと馬の毛で作られているという手植えヘアブラシも気にかかる。値段は馬毛ブラシの3倍だ。試用させてもらうと頭皮への刺激が超快感。近頃減ってきた髪の毛もこれで少しはセーブできるかも、などという思いも頭をもたげ、買うことにした。近頃、何も買っていないし……自分に向かって言い訳もした。

 家に戻り、入手したブラシ類を並べてニンマリしていると、夫がやってきてこう言った。「またその気にさせられちゃったの?」 否定はできない。しかし私は久々のお買い物に大満足。やっぱり買い物って気分が爽快になるんだなあ、としみじみ思ったのである。


馬毛ブラシ | こぐれひでこ



 左から《手植え馬毛ボディブラシ》《手植え馬毛&イノシシ毛のヘアブラシ/柄の部分は黒檀》高価なのはこの2点。以下は手頃な値段《ヘアブラシの掃除用のブラシ》《小さくてカワイイ亀の子タワシ》《茶渋取りのブラシ》。(株)藤本虎/台東区雷門2-19-4/03-5828-1818




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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)