くらしのたね

丸見えのキッチン

丸見えのキッチン

これは我が家のキッチン。
「あらまあ、なんでもかんでも出しっ放しなのねえ」と眉をひそめたアナタ。アナタは正しい!そうなんです。我が家のキッチンは、鍋もフライパンもザルもグラスも全部、空中にぶら下がっています。食器類はどうかというと、これまたドアのない棚に重ね置きしているので、外から丸見え。しゃもじ、菜箸、お玉、ヘラなどはブリキ製のレター入れに投げ込んであるし、ピーラーやトング、チーズおろし器、泡立て器は壁につけたフックにぶら下がっています。キッチンのコンセプトは「開けっぴろげなキッチン」あるいは「裏表のないキッチン」。


「ははあ、この人は整理整頓が苦手なのね」そう思ったアナタ、アナタは正しい!


以前住んでいた家のキッチンにはたくさん食器棚があったのに、いつも使う食器や鍋などが調理台に出しっ放しになっていて、使われない食器はいつまでたっても棚の中。まったく有効利用できていなかったのでした。それもこれも整理整頓が苦手な私のせい。


そこで今住む家を造ったとき、私に適したキッチンとはどんなものなのか、じっくり考えてみましたところ、完璧収納できるようなキッチンだとまたもや同じことが起きると確信したのです。そして、かなり真剣に考えて出来上がったのがこのスタイル。


何がどこにあるか一瞬にして発見できるので、調理はスピーディに、とても楽しく進みます。

いやいや便利さだけでなく、さまざまな調理器具がぶら下がっているのはインテリアの面から考えてもカワイイんじゃないのかなあ、と密かな誇りも感じています。このキッチンを使い始めて14年。いまでも「かわいいじゃん」と目を細めています。家は、ことにキッチンは住人と仲良しになれるかどうか、そこがイチバン大切ですねえ。



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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)