くらしのたね

ベッドカバーは夢の世界への扉

 アナタは1日のうちでイチバン幸せだなあと思うのはどんなとき? 私はね、パジャマに着替えてベッドに横たわるとき。そりゃ他にも、食事をするときや入浴後、誰かと話して笑いころげるとき、仕事がうまくいったときなど、幸せだなあと思うときはあるけれど、そんなチャンスはそうちょくちょく訪れるわけではない。だけど、ベッドカバーをめくるとき、そのときは毎日、必ず、ああこれから私は眠るんだなあ、と幸せな気分に包まれる。
 だからね、ベッドカバーは大事よ。幸せな眠りにつく入り口だからね。さっき、現実と夢の世界の境界、それはベッドカバーなのでは? なんてことを思いついたばかりなのだが、確かに、ベッドカバーは意識ありと無意識の境界かも。私の思いつきは真実をついているような気がする。

 さてそれでは、我が家にある夢の世界への扉を紹介しよう。
こぐれひでこさんの山の家のベッドカバー

 これは山の家のベッドカバー。20年近く前に「部屋をデザインする」という展覧会があり(数名がそれぞれ部屋を発表した)、その展示用として東京にある生活雑貨屋で購入した。渋めの赤に生成りという配色(二枚重ね)と渦巻き状のアップリケが私の琴線に触れた。素材はウールモスリン。夏でも寒いくらいの山の家に適したベッドカバーだ。ただしキングサイズ用のカバーなので、セミダブルにはちょっと大きすぎるのだが。


こぐれひでこさんのベッドルーム

 本拠地・東京のベッドカバーは綿のレース。本来はテーブルクロスとして作られたものだが、我が家ではベッドカバーとして使用している。北京に行ったとき、デパートで購入。大きめのテーブルクロスはシングルベッドにぴったりのサイズ。レースのベッドカバーをめくって潜り込むとき、ちょっとお姫様気分になる(夫も同じ気分なのかどうか……それは知らないが)。


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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)