くらしのたね

自分の過去は宝物


  我が家には26年分の日記が残っている。小学時代、夏休みの絵日記を最後の3日間で仕上げるのが得意だった私なのに、不惑を迎える年頃になって、突如日記を綴り始め、とっくに還暦を過ぎたいまも続行中。 人間、過去ばかり振り返ってはイケナイ。世間ではよくそんなことを言うけれど、私はその考えに異を唱える。自分の過去を振り返る、こんなに楽しいことがありましょうか。古い日記を見ていると自分のしてきたことが愛おしく思える。人間なんてそんなものなんじゃないかな。


3冊の日記


 さて、ここに3冊の日記があります。 右下は1987年の日記。イラストは水性フェルトペン、パステル、アクリル絵の具など。我が家にはまだPCが導入されていないので、描いたものをインスタントカメラで撮影し、こんな具合に貼付けていた。ゴルフに熱中していた。初めての本「まあるいごはん」を出版した。貼られた名刺を見ると、この頃まだ、東京の電話局番は3桁だった!

 上にある大判の日記は2001年のもの。イラストは水彩。PCが導入されて10年余り経っているので、イラストはスキャニングしてからプリントアウトしたもの。この数年は仕事が忙しかった。「こんなにたくさんの仕事、私には出来ないよ~」と泣いている日もある。頑張ったんだねぇ、と過去の自分に拍手を送る。

 左下は今年の日記。画材は色鉛筆に変わっている。仕事は10年前みたいに忙しくはない。誕生日直後、区役所から「介護保険被保険者証」が届き、改めて我が年齢を実感。エネルギー政策に関する記述が多い(去年から)。初夏以降、新しく購入した家に関する記述が多い。さて、今年も残り2ヶ月。これから私はどんなことを記すのでしょうか?
 波瀾万丈とは無縁、普通の生活を送ってきた私でも、自分の過去を振り返るのは楽しい(ただし楽しいのは本人だけ。ここんとこ要注意!)。 みなさん、あなたが何歳であれ遅くはありません。日記を綴ってみてください。あなただけの宝物になりますよ!





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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)