くらしのたね

プレースマットの習慣・その始まり

わが家には多種類のプレースマットがある。テーブルにマットを敷き、ナイフ&フォークや箸、皿、ナプキンなどをセット。
階下にいる家人に「ごはんができたよ!」と声をかけ、食事が始まる。豪華料理を食べるときも、おにぎりだけのときも、朝も昼も晩も、マットなしに食事は始まらない。 

わが家一代目のプレースマット

そもそもこんな習慣ができたのは、フランス・ブルゴーニュ地方にある町・Beaune(ボーヌ)の土産店で買ったこのプレースマットがきっかけ。
ボーヌはコート=ドール(黄金の丘)という上質ワインを産出するワイン街道の中心地。
その町の土産店に並んでいたものなので、当然のことながら絵柄の主役はワインである。
ブルゴーニュワインを使う4種類のブルゴーニュ地方料理レシピがプリントしてある。
チーズが描かれた皿も同じ店で買った。

くどい、実にくどい絵柄の組み合わせだが、「牛肉の赤ワイン煮」など昔から伝わるフランス料理の皿を載せると、とてもよく似合う。

入手したのは1985年の春。それまで十数年間続けた洋服の仕事に終止符を打ち、ぶらりと旅に出た時のことだった。その後「食」に関する文や絵を書く(描く)ようになるなんて考えてもいなかったあの時に、こんなプレースマットと皿を購入していたとは……。

人生、どう転ぶかわからない。
でも、だからこそ人生は楽しい、とも言えるのである。

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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)