くらしのたね

ストライプの呪縛

 アルバムをめくると18歳の私がストライプの長袖Tシャツを着て笑っている。 タートルネック、色は薄いブルーに紺色だったはず。


18歳の私|こぐれひでこ


 上の写真から4年後、私は級友と結婚して都営住宅に暮らしていた。 遊びに来た友達が写したものだろうか、ちょうちん袖のT-シャツは赤と白のストライプだった。 写真は私、24歳の頃か。 眉毛がないのが気にかかる。


24歳頃の私|こぐれひでこ


 上の写真が撮られたこの部屋からパリへ行った。 買い物をして家路を急ぐ私。 Tシャツはやはり、赤と白のストライプだった。 ワインの瓶をそのまま手に持っているなんて…。 お行儀の良い日本の方は、そんなことを思うかもしれないが、パリじゃそんなこと不問だった。 この写真は26歳くらいかな?


26歳くらいかな?|こぐれひでこ


 上の写真から10年余りの時が過ぎ、私は洋服の仕事を辞めてイラストレーターを名乗ることにした。 それを機に自分のユニフォームはフランスの漁師さんたちと同じように、ブルーと白のストライプのマリンTシャツにすることにした。 何枚も買いました。 ボロボロ、テロテロになっても捨てられず、着倒していましたが、1999年の春、ヴェトナム旅行の途中でそのうちの一枚とお別れすることにしました。 このてらてら光るベッドカバーの上にこのように広げて置いてきました。 これはその時の証拠写真です。 上の写真は新品状態のTシャツ。この時私、52歳。


52歳頃の私|こぐれひでこ

旅行の途中に置いてきたボーダーTシャツ|こぐれひでこ



 続きましてこれは、私61歳の時。 スペインのコルドバでの写真。 マリンTシャツは暑すぎて、ふくよかな肉体をあらわにしたこのような服を愛用。 色はもちろんブルーと白。 この服、生地が薄くなってところどころに穴があいていたりしますが、どうしても捨てられない。 ん~、もう着られないのになあ。


コルドバのシャツ|こぐれひでこ



 先日、夏服を買いに街へ出かけました、いろんな店を歩き回ったのに、結局私が買ったのは、ストライプのTシャツ。 衣装替えをしてみたら、まあ出てくること出てくること、同じようなストライプのTシャツが。 一部を洗って干してみたら、まるでストライプ専門のブティックのよう。


こぐれひでこ|くらしのたね



 私は多分、一生、ストライプにかけられたおまじないから逃れることができないのでしょう。 でも、ストライプが好きとはいえ、縦じまはそれほど好きじゃない。好きなのは横縞。 横縞….よこしま… 「ん? 私は邪な(邪悪な)女なのか?」と軽く自分にツッコミを入れてみたのでした。。


こぐれひでこ「くらしのたね」バックナンバー

やさしい手作りのある暮らし てころはこちら

プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)