くらしのたね

オノマトペって面白い!


 オノマトペという言葉、知っていますか? 擬音語、擬声語、擬態語を総称するフランス語です。世界中の言語にオノマトペはあるけれど、日本語はその中でも群を抜いて多い。近年もなおすごいスピードで増殖中とのこと。しかも同じオノマトペでも複数の意味がある。オノマトペは商品開発にも大きな力を発揮している(6月放送のNHK/クローズアップ現代で紹介していた)。頭に浮かぶオノマトペの日本語を羅列してみると、こんな具合。

 イライラ(している)/うんうん(唸る)/カーッ(と怒る)/ガシガシ(働きかける)/ガツガツ(食べる)/がぶがぶ(飲む)/ガミガミ(怒る)/ガンガン(頭が痛い)/きゃあきゃあ(騒ぐ)/キラキラ(輝く)/ギリギリ(セーフ)/キリキリ(胃が痛む)/ぐいぐい(引っ張る)/グウグウ(眠る)/ぐじぐじ(した性格)/グズグズ(する)/ぐちゃぐちゃ(言う)/ケラケラ(笑う)/ごつごつ(した手)/ごみごみ(した町)/サクサク(仕事を進める)/さくっ(とした食感)/サッサ(と行動する)/ざわざわ(と心が騒ぐ)/さらり(と水に流す)/さらさら(した髪)/さばさば(した性格)/ざらざら(な肌)/シクシク(泣く)/ジクジク(した傷口)/シャキッ(とした野菜)/シャッキリ(しろよ!)/じゃぶじゃぶ(金を使う)/じゅわー(と肉汁が溢れる)/じわじわ(と感じる)/スラスラ(本を読む)/スルスル(滑る)/ずんずん(歩く)/せかせか(歩く)/そろそろ(歩く)/(背中が)ゾクゾク(する)/ちびちび(飲む)/ツルツル(頭)/とぼとぼ(歩く)/とげとげ(した物言い)/どーん(と上がる花火)/どどどっ(という地響き)/ドキドキ(する)/トントン(と肩を叩く)/なよなよ(した人)/にこにこ(顔)/ニヤニヤ(した男)/ヌメヌメ(した手触り)/バサバサ(の髪)/ハラハラ(しっぱなし)/ばらばら(なチーム)/パンパン(に膨らんだお腹)/パサパサ(した不味いもの)/ひそひそ(と話す)/びゅっ(と通り過ぎる)/びゅーっ(と通り過ぎる)/びゅーびゅー(風が吹く)/ぶるぶる(震える)/ふわふわ(の布団)/ブンブン(棒を振り回す)/ぷんぷん(怒る)/ふんわり(したカステラ)/ベチョベチョ(のチャーハン)/ヘトヘト(に疲れる)/ぽってり(した顔)/ほっこり(和む)/ボロボロ(の靴)/ぽろぽろ(と涙を流す)/ぼーっと(する)/まったり(と過ごす)/むしゃむしゃ(食べる)/むっちり(した肉体)/むにゃむにゃ(と何か言っている)/もうもう(とまきあがる土埃)/もくもく(と雲がわきでる)/モグモグ(と口を動かす)/もじゃもじゃ(髪の男の子)/もちっ(とした餃子)/もちもち(したパン)/もにょもにょ(と口ごもる)/もたもた(してないで早くやりなさい!)/もぞもぞ(としてばつが悪そう)

 フ~、とても書ききれません。他の言語だったら、一般単語を駆使して説明しなければならないところ、日本語ではオノマトペだけでOK。なんだか誇らしい気分になってきませんか?


こぐれひでこ|ルンルン





 ところで上にある写真、二十数年前に死んでしまったわが家の愛犬です。彼女の名前は《ルンルン》。ルンルンというオノマトペは楽しくて思わずスキップしてしまうときに使うものですが、怖そうな黒いシェパードには似合わなかったかも。しかし飼い主にとっては気弱なカワイイ犬で、家に戻ると嬉しそうにルンルン飛び跳ねてくれました。彼女が死んだとき、私はシクシクではなくワンワンと泣きました。


こぐれひでこ「くらしのたね」バックナンバー

やさしい手作りのある暮らし てころはこちら

プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)