くらしのたね

古い布の復活


パリの蚤の市で買った椅子

 先日、修理に出した椅子は100年前に作られたもとは思えぬほどがっちりして戻ってきた。入れ替わりに修理に出したのがパリの蚤の市で買ったこの椅子2脚。売り主は「ナポレオン三世時代のもの」と言っていた。しかし蚤の市で商いをする人たちは、古そうなものには「ナポレオン三世」という言葉をつけるのが常套手段なので、それを信じて買ったわけではない。背もたれを飾る竪琴の形が気に入っただけだ。
 最初の座面の布がすり切れたのは10年後。その後張り替えて10年が経ち、またもやすり切れてぼろぼろになった。そしてこのたび、2度目の張り替えをこんな布で。がたつきも修理してもらい、立派な姿によみがえった。

 さて、この布、元は何だったでしょうか? 答えは「アンデスのポンチョ」。22年前、ペルーを旅したとき、調子づいて買ってきたのだけれど、日本で着たら変、そしてすごく重たいと、旅の買い物大失敗の代表選手だったのに、今回、お尻の下で活躍することになった! しかもナポレオン三世(様式)とアンデス織物との組み合わせ、かなり面白いコラボだと思うけど、どうですか?


自分で縫おうとしているクッションと布


 そして今、自分で縫おうとしているのがクッション。この布は自由が丘にある古道具屋で買った。布は幅140cm×長さ3mのSALE品で1000円なり。ちょっとナポレオン三世的な、ちょっとブルジョワ的な、落ち着いた色合いのペーズリー柄。プリントではなくジャガード織である。安いではないか! 使い道も考えず買った。その後、クローゼットに眠ること数年。このたび晴れてこの布は出番を迎えることになったのである。おめでとう!

 晴れた日の午後、暖かな冬の日差しに包まれて、ミシンをカタカタと踏む私。いい感じじゃありませんか?頭に描いただけで自己陶酔してしまいそう。
 何でも好きだと思ったものは許される限り手に入れておいた方がいい。このたび私はしみじみそう思ったのである。


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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)