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昭和の香りを残すアーチ型小店街



昭和の香りを残すアーチ型小店街 |くらしのたね こぐれひでこ


 さて問題です。これはいったいどこでしょう? 
 知っている人は知っている。でも知らない人が聞いたらアッと驚く場所だ。JR有楽町駅から線路沿いを新橋方向に歩く。銀座4丁目方向への晴海通りを曲がらずにそのまま進むと、こんな風景が続いている(東京電力本社前あたりまで)。右手には帝国ホテル、東京宝塚劇場、映画館などの近代的高層ビルが建ち並び、その先には日比谷公園と皇居。ね。「そ、そんな東京のど真ん中に、こんな場所が!」とびっくりでしょ(知らなかった人は)。昭和の息づかいを色濃く残す小店街、これは銀座付近の渋い魅力の観光スポットだ。外国人向きのガイドブックに紹介されているだろうか。されていて欲しい。


有楽町 |くらしのたね こぐれひでこ


 頭上には新幹線、山手線、京浜東北線、東海道線が走っている。小店は線路の橋脚であるアーチ型の空間に並んでいるのだ。実にノスタルジックで素敵な風景。線路下を通り抜ける通路もアーチ型。アーチ型建造物は美しいなあ。


有楽町 |くらしのたね こぐれひでこ


 こういう橋脚は歴史的建造物としてぜひとも保存して欲しいと思うだが、東京電力本社を過ぎて新橋駅方向へ進むと、工事中のシートが張り巡らされていた! うっ、これはまずい。耐震強度を増すために近代的な形の橋脚に造り変えられてしまうのではないか。それはまずいぞ! いや、これらの橋脚はかなり古いと思われるので、強度を増すべきだと私も思うが、この美しいアーチ型を残したまま、なんとか問題を解決できないものか。キラキラした新品のものしか存在しない都会なんて、魅力的ではない。線路下のアーチ型橋脚保存委員会はまだ発足していないのだろうか?


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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)