くらしのたね

日本は広い。お雑煮もいろいろ。


こぐれひでこ|日本は広い。お雑煮もいろいろ。




 あと一週間で2014年。お正月がやってきます。元旦の朝、どの家庭でも食べるのがお雑煮。あ、沖縄にはお雑煮を食べる習慣はないそうですが……。

 各地のお雑煮を調べてみると面白い。大きく分けて(例外あり)東日本では焼いた角餅を、西日本では焼かない丸餅をお雑煮に使用。大きく分けておつゆは醤油仕立てのすまし汁(東日本に多い)、味噌仕立て(西日本に多い)の2種類。北海道や青森や新潟では塩鮭やイクラを入れると言うし、岩手では甘く仕立てた胡桃ダレをつけ、奈良県では甘いきな粉をつけて食べる。ブリを入れる地域も、車エビを入れる地域も、鯛の地域も、牡蠣の地域も、岩のりの地域も……結局その地域の特産物でお雑煮を作る、ということなのでしょうね。

 京都で甘い白味噌仕立てのお雑煮を食べたとき、おいしいけどこれはお雑煮じゃないでしょ、と戸惑いました。まだ食べたことがないけど、香川県や愛媛県で食べられると言う白味噌仕立てにあん餅が入っているというお雑煮ね。その地域出身の知り合いに言わせれば、《とてもおいしいよ》ということですが、イメージができない。いやいや、関東圏内にしか親戚を持たない私には、ブリだって牡蠣だって鮭だって……《おいしいかもしれないけど、それはお雑煮じゃない》ということになってしまう。

 考えてみれば、友人やお隣さんがどんなお雑煮を食べているのか、そんなこと知らない。お雑煮は自宅で家族と食べるものだから、他の家のお雑煮を知らなくて当然。誰でもみんな自分の家のお雑煮が《お雑煮の基本》と思っているはず、でしょ? ですよね? 遠い地域で育った男女が家庭を持ったとき、その家のお雑煮はどんなものになるのだろう。妻が勝つのか、夫が実家の習慣を押し切るのか……興味深い問題だ。


こぐれひでこ|日本は広い。お雑煮もいろいろ。





 あ、わが家は、夫のルーツは群馬県、私のルーツは埼玉県にあるので、基本的に同じようなお雑煮。新生活の始まりから何の問題も起きませんでした。どんなお雑煮かと言うと、おつゆはカツオ昆布だしの醤油仕立て。角餅は焼く。具は鶏肉、筍、里芋、大根、椎茸、絹さや、三つ葉、ゆず(など、年によっては小さな変化があるが)。ま、関東一円で食べられる一般的なお雑煮ですね。

 おせち料理は用意せず、数の子、蒲鉾とほんの少しお正月っぽいものを用意するだけ。毎年、元旦には実家を訪問することになっているので、おせち料理は実家で食べればOK、長年、そう決めている。
 これぞお雑煮! と思えるヤツを《あけましておめでとう》の声とともに食べて、2014年のスタートを切りましょう! 1週間早いけど《良いお年を!》


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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)