くらしのたね

花を生ける

 梅雨前の花の変遷。 夫の創造力に完敗しました。

 4月末日、32年前に解散した会社の同窓会を我が家で開いた。 私が主宰していた小さな会社の同窓会だ。 「おしまいにしようと思う」私が社員に告げた時、みんなで泣いた。 利益を生み出せない代表者の責任は重い。 そう思って私も泣いた。 でもいまはあの時やめる決断をしてよかったと思う。 まだ20代だったかつての社員たちは、それぞれの分野で活躍してくれている。 ありがたい!

 その日いただいた花はこんな風に飾った。家中にいい匂いが漂った。

花を生ける|こぐれひでこ


 5月初め、野菜の直売所へ出かけると、アザミの一種であるアーティチョークが売られていた。 紫色のアーティチョーク、造形的にすごいでしょ。 我が家ではこれを蒸してマヨネーズ的ソースで食べる。 その日は調理前にひと仕事してもらおうとワインクーラーに入れて飾ったのである。


アーティーチョーク|こぐれひでこ


 アーティチョークを飾りつけた直後、夫が庭から大量の花を摘んできて(私に対抗する気だったか?)、大きなほうろうの水差しに、こんな大胆さで花を飾った。 勝負は一発で決まった。 私の負けである。 さて皆さん、この花はなんだと思いますか? なんと、なんとこれは大根花。 いろんな空き地にいっぱい咲いている地味な、実に地味なあの花。 生け方によってこんなにゴージャスになるのです。 わが夫の創造力に脱帽です。


大根花|こぐれひでこ


 またまた夫が力を発揮しました。「うちのアーティチョークは背丈ばかり伸びて蕾が大きくならない」と常々愚痴を言っていましたが、朝、途中から折れているのを発見。 家に持ち込んで生けました(またもやほうろうの水差し)。 いやはや、これもダイナミック! 蕾だけじゃなく、この葉っぱも美しいんです。


アーティーチョーク|こぐれひでこ


 裏庭の紫陽花が咲き始めました。 お恥ずかしや、ちまちました生け方のこれは凡人の私めの作でございます。 紫陽花が咲くと、もうじき梅雨の季節に突入ですね。 そぼ降る雨と涼しげな風情の紫陽花はナイスカップル。 紫陽花の原産地は日本だなんて、なんだか誇らしい気持ちになりませんか?


紫陽花|こぐれひでこ



 



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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)