くらしのたね

刺激って大切!


 先日、長野県松本市へ行った。

 1日目はサイトウキネンフェスティバル公演:オラトリオ「火刑台のジャンヌ・ダルク」を鑑賞し、素晴らしい演奏の渦の中に埋没する。翌日の午前中、松本市美術館開館10周年記念展「草間彌生:永遠の 永遠の 永遠」を鑑賞。午後には福井良之助(孔版画)展での都築響一氏のトークショーを聴く(見る)。濃密な芸術に包まれる2日間を過ごしたのである。「火刑台のジャンヌ・ダルク」にも、都築響一氏のトーク&不思議なパフォーマーたちの写真にも、とても心を打たれたのだが、頭の中が空っぽになってしまうほどの衝撃を受けたのは、日本が誇る前衛アーティスト草間彌生の展覧会。


草間彌生の展覧会_1


草間彌生の展覧会_2


 草間は松本市で生まれた。松本市美術館には彼女の作品が常設されているので、松本に来ると必ず訪れるのだが、今回の大展覧会では常設以外の作品も並んでいる。それらの中で、特に私の頭を空っぽにしたのは「Love forever」というモノクロのシリーズ作品(撮影禁止の部屋だったので写真はナシ)。宇宙、宗教、死、生、狂気、可愛らしさ……草間の天才ぶりには言葉もありません。来月で83歳になる彼女だが、制作意欲はますます旺盛。今年だけでも世界各地で大展覧会を開催し、LOUIS VUITTONでは彼女とのコラボレーションを展開中。数十年も前から世界中で人気のあるアーティストではあったけれど、近年、その勢いは増している。

 久しぶりに受けた圧倒的な刺激。「チチチ」という音がして私の中のどこかにヒビが入ったみたい。これをきっかけに、今まで見えなかった何かが見えるかも、そんな気になってしまったのである。変わりない日々を過ごせるのは幸せだ。しかしたまにはものすごいパワーを放つなにか(生き物でも、芸術作品でも、音楽でも、香りでも、食べ物でも)から刺激を受けることも必要なのではないか、そんなまともなことを考えたのであった。


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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)