くらしのたね

ナイスかもしれない廃物利用


 久しぶりに先月はあたふたしていた。仕事が多かったわけではない。1本の原稿がなかなか書けなくて、気持ちが落ち着かなかっただけなのだ。6月末日、その原稿を納品して一息。過去に描いた原画の整理を始めることにした。

 イラストレーターと名乗りだしてからはや28年。それなりに忙しい時期もあったので、箱に詰められた原画は大量である。できれば手を付けずにそのまま捨ててしまいたい! そんな欲望にかられるが、丸ごと捨てちゃう勇気は出ない。しかし、近い将来引っ越すはずの家にこんな量の原画を収納するスペースはない。私に残された解決法は、処分する、それしかないのだ。

 私は絵を描いているが、画家ではない。画家の描いたものなら1枚の作品として成立するのだろうが、私の絵はそれだけじゃ成立しない。自分の文章の補足として(絵と文章が逆の場合もある)イラストを描くという仕事が多かったので、作品と言いきってしまえるような絵がないのだ。

 「こんなの要らない」とゴミ袋に捨てた。大量に捨てた。しかし「ちょっと待てよ、小さい絵なら、これ、切り取ったら絵はがきになるんじゃないの?」と思ったのである。お、これはナイスなアイデアだ! 原画整理が始まったばかりなのに、ゴミ袋から拾い上げた小さな絵をトリミングしてはがきを作成した。こんなにいっぱいのはがきができた。


こぐれひでこ 原画





 自分で言うのもおこがましいが、カワイイ!! こんなはがきが送られてきたら、私は嬉しい(万人が嬉しいかどうか分からないけど)。まともかく、こんな形で廃物利用ができるとは、いいところに気がついたね!と少しばかり自分をほめてやったのでありました。そんなことに熱中しているおかげで、整理は一向に進んでおりません。うう~、先は長いぞ!。



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プロフィール

こぐれひでこ プロフィール

1947年埼玉県生まれ。
イラストレーター。
デザイナーとして活動後、
『流行通信』での連載がきっかけとなり、イラストレーターに。著書には、「食」「暮らし」に関するエッセイも多く、毎日の食事を公開しているホームページ「ごはん日記」は2000年より連載中。読売新聞の「食」に関するコラム「食悦画帳」は2004年より連載中。著書は『こぐれひでこのおいしいスケッチ』(新潮文庫刊)、『小泉今日子×こぐれひでこ 往復書簡』(角川マガジンズ)